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 ノックと共に聞こえた声に直が答える。 「すみません。堤さん、ありがとうございます」 「こちらが、わたくし手製のスペードの3になります」  どうだとばかり得意気に堤が差し出した、良くも悪くもハンドメイド感の溢れたカードに二人の顔はほころんだ。温かな気遣いが嬉しくてなかなか収まらない笑い混じりの声のまま、よしのは言った。 「ありがとう。ねえ、堤さんも一緒にやりませんか?ひとりだけの支配人さんじゃ忙しいかもしれないけど、一回くらい」 「おや。よろしいんですか?わたくしはこう見えてもカードゲームには少々自信が」 「って言っても、まさか支配人さんがお客に勝ったりしませんよね?」  にやりと笑った直に堤は真顔で答える。 「なにを仰いますか。勝負は勝負。誠心誠意、正々堂々と全力を尽くすのも、支配人兼従業員兼受付会計……」 「はいはい。で、なにしましょうか」 「……露木様も海棠様に負けず手厳しいお方ですね。……はい、ババ抜き七並べ神経衰弱大貧民ブタのしっぽ、なんでもお二人のお好きなものを」
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