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 窓の無い廊下の、ゴシック調の壁紙に挟まれて四人はしばし沈黙していたが、海棠の溜息がそれを破った。彼が出て来た、堤が鼻をぶつけたドアは開いたままだ。 「話は分かったが……『これ』はあんたが仕組んだことじゃねぇよな?」  海棠が鋭い眼を堤に向ける。 「わたくしがしたことは、お客様のご要望にお応えして海棠様を当ホテルにお招きし、こちらのお部屋にご案内した、それだけでございます。が、……もしも、こちらのお客様が」 と、堤は品のいい仕草でよしのに手のひらを向ける。 「そのお部屋にいらっしゃるお客様のお知り合いなら、私の預かり知らないところで、ご縁が導いたということでしょう」 「……話は聞こえてるな?」  海棠が部屋の中に向かって声をかけると、はい、と答えたのはまだ若い男の声だ。しかもよしのには聞き覚えのある。 「まさか……」 「……間に入っても困るからなにかいい方法が無いかと思って、あんた呼ぼうと思ってたところだ。後頼む」  眞里絵を連れてドアから離れた海棠に堤は頷き、よしのに向き直る。 「……ということですので、お客様はどうぞこちらへ」
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