イチゴの花に誓って

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 私が君彦さんにはじめて会ったのは、ある小学校でだった。  私が小学校へ行くことになった経緯はすこし複雑で、一言で説明できない。  30代も後半、40になりかかっている私は結婚なんて遠い夢で、最初から諦めていた。  私には12歳離れた叔父がいる。幼いころ両親が離婚して、お母さんの実家、おばあちゃんの家で暮らすようになった時、叔父はまだ17の高校生で、たった5歳の私には目もくれなかった。  それでも私は遊び相手が欲しくて、叔父の部屋によく入り浸った。追い出されても何度も誘ううちに、一緒に遊んでくれるようになった。  トランプやすごろくなどをしても、子供の私にむきになるような人だった。  高校生になった私は、徐々に叔父に対して恋心が芽生えていく。三親等以内は結婚できないなんて法律もまだ知らなかった。  友達からその話を聞き、ひどく悲しんだのを覚えている。それでも私は諦めきれず、三十八までこじらせてしまい、今に至る。  もちろん叔父には私の気持ちは伝えていない。気付かれているかもしれないと思ったこともあるけど、大概叔父は鈍い。  アルバイトぐらいはしてたけどすぐやめてしまいほとんど部屋にこもりきりの叔父だが、いいところもあるのだ。  花言葉なんて調べてスズランなんか部屋に飾っていた日には、ちょっとひいたけど。    最近になって叔父が悩んでいるのを知り、少し心配になった。叔父がずっと読んでいる本のせいかもしれない。私もこっそり読んでみた。それは「あるいじめの記録」という本で、叔父は高校時代のいじめについて後悔しているようなのだ。  私は本を最後まで読んだ後、この本を書いた井口さんが校長をしている小学校を訪ねてみようと決意した。
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