戦場という名の休日

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「桜次郎様、お怪我はございませんか?」 「だ、大丈夫です……ありがとうございました。俺、よそ見してて……すみません」  前方から現れたのは黒野さんだった。彼は俺の手をしっかり掴み、腰に手を当てて身体を支えてくれている。黒野さんだから咄嗟に行動出来たんだろうな……これ。もし鈴芽だったら倒れた矢先、更に文句という弓矢の嵐が無数に降り注ぐだろうな。  ちょっと安心しつついると、暫くしても体勢が変わらない事に気付く。支えてはもらっているが、この体勢結構疲れるんですけど……それに黒野さんの手が暖かいのもあってか、ギュッと握られた掌がちょっと汗ばんできたのですよ……。 「黒野さん?」 「……」  心なしか彼の顔がいつもより赤い。元々透き通った白い肌をしているので赤色に染まっていると余計に目立つ。黒野さんらしからぬ程ボーッとしてるし……。これは風邪では!? 「あ……だ、大丈夫ですか?」 「大丈夫です。お気になさらず……」  黒野さんはそう言って俺の身体から離れた。この状況で『大丈夫ですか?』なんて聞いたら『大丈夫』って言っちゃうよな……それに彼は大丈夫じゃなくても大丈夫って言うような人だ。 「黒野さん風邪ですよね」  俺は黒野さんに有無を言わせず彼のおでこに手を当てた。  あれ……そんなに熱くないし。 「桜次郎様、その……本当にお気になさらないで下さい」  ペコリと一礼すると、彼は颯爽と去って行ってしまった。熱も無さそうだったしまっすぐ歩いてるし、俺の気のせいだったのか……。何かいつもと雰囲気が違うように見えたからそう思っただけだけど。  そしてバリカンがあるか聞くの忘れた……。
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