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部員たちは驚きのあまり、なんのリアクションも取れなかった。なぜならば私たち一年生は、いまだキャッチボールすらまともにさせてもらえない状況だったからである。その時点で監督が目にしている一年生の練習風景は、ただただグラウンドを走らされている姿とボールを拾っている姿、そして拾ったボールを下から投げて上級生に渡している姿だけであるはずだった。
突如マウンドに上げられた人望くんは、いきなりの初登板のわりには特に緊張する様子も見えなかったが、結果は打ち込まれての十一失点と散々な内容であった。
しかし監督は、どういうわけか最後までピッチャーを代えることはなかった。そして打っては中軸の四番を任されているにもかかわらず、鳴かず飛ばずの五打数ノーヒット。その日の大敗のA級戦犯は、明らかに人望くんその人であるに違いなかった。
そのプレーは誰が見てもレギュラーのレベルには達していないように思われたが、それから三年の夏に部活を引退する最後の日まで、彼はたいして上達することもないままにエースで四番を任され続け、二年の秋からは主将にまで任命された。
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