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Part.7
私がアリシアを殺した。
私がアリシアを殺した。私がアリシアを殺した。私がアリシアを殺した。私がアリシアを殺した。私がアリシアを殺した。私がアリシアを殺した。私がアリシアを殺した。私が私が私が私が私が私が私が私が………………。
「クリス」は理解出来ない思考で、思考循環状態になってしまっていた。こうなると疑似人格としては使い物にはならない。コンピュータが解けない問題で固まってしまうようなものだ。
私は、いつの間にか「クリス」の疑似人格から人間の感情を学習していたらしい。海王星の調査は失敗だ。私は全てのバーニアを逆噴射させて、惑星から離れようとした。ここは逃げないと探査船がバラバラになってしまう。
「逃げるつもり? 」
私は、「クリス」では無い。疑似人格はもう使い物にならない。リセットでもかけないと。……何故ここに君がいる?
「私は「クリス」が、ここに来るのを待っていた。私は生身のクリスを殺したかった。でも彼は事故で独り逝ってしまった。だから、私は疑似人格を搭載した『アルゴ№0230』がここに来るのが分かっていたから、死ぬ前に、同じ探査船の№0041の疑似人格になったの。私はあなたを殺す。私はあなたを殺す。私はあなたを殺す。私はあなたを殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…………」
私の真下の大暗斑が、惑星の暴風のためか、楕円形が急に広がったように見えた。
花だ。
それは巨大な花になった。
初恋草? いや、食虫植物であるムシトリスミレにそっくりだ。淡いブルーは同じく変わっていない。
「アリシア」も思考循環状態になったように、大暗斑のブルーは花弁のように広がった。
私は、コンピュータでありながらも、恐怖というものを知った。
逆噴射しながらも、惑星の重力に引っ張られている。残り少ない燃料が無くなってしまえば、この食虫植物に吸収されてしまうだろうな……
『アルゴ№0041』だった塊りは、既にシグナルを出していない。光も消えていた。自分の役割を終えたとでもいうのだろうか。
探査船のボディが海王星の荒れ狂う大気にさらされつつあった。遥か太陽系遠くを超えてきたといっても、予想もしない衝撃には、なすすべもない。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す……………。
残骸もすでに無いのに、思念は残ったままか。
私は、崩壊しようとしている探査船の中で、微かに、「クリス」の声を聞いた気がした。思考循環は収まったのか。一言だけ聞いた。
私は、アリシアを愛している……。
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