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暁斗は目を開けた。
派手なシャンデリアが、吹き抜けの天井からぶら下がっている。
慌てて上体を起こす。
自分の体は、キャラメル色の革張りのソファーに寝かされていた。
片足を下ろす。
あんなに痛かった足は、曲げても伸ばしても全く痛くない。
あたりを見回す。
どこかのレストラン。
手には一様にシャンパングラスを持っている。
誰かが手を叩く。振り返ると、今度は男女グループが派手に笑いこけていた。この男たちも、金髪、赤髪、黒と白のマーブルや黄色にオレンジ。どうやらこちらのグループはだいぶお酒が入っているらしく、顔を真っ赤にした人物が中心でおどけながら踊っている。
洋館のような雰囲気の大広間に、髪色の奇抜な男女。
全員でざっと50人はいると思われる彼らを眺める。
―――ここは、どこだ。
暁斗は前後左右を見回しながら記憶を辿ろうとしたが、何度試みても思い出すのは、凄惨な椴山での事件のことばかりだった。
もう一度足を見る。
確かに外傷はない。
―――すべて夢だったのか?
自分を見下ろす。
見覚えのないテラコッタ色のセーターに黒のスキニーパンツ。革靴まで履いている。
ーーーセーター?
夏だったはずだ。
足首に違和感を感じスキニーパンツを捲ると、いつか見た足輪が付いていた。
「覚えてるでしょ。それ」
すぐ背後から声がして驚いて振り返る。
以前会ったときは堀内栞という名を名乗っていた女がそこに立っていた。
「私達やあの事件のことを言ったら、すぐ、あの世行きよ」
彼女は黒いドレスに身を包みながら笑った。
「あなたも、彼も、ね」
言いながら彼女はソファの背を指差した。
覗き込むとそこにもたれ掛かるように矢島が寝ていた。
「おい、矢島!しっかりしろ」
「――――ああ?」
真っ赤なプルオーバーのパーカーに、ジーンズを履いている矢島は、眠そうに目を擦った。
瞳の色は元に戻っている。
「矢島ーーー」
「どこだ、ここ」
やがてあたりの異変に気づくと、立ち上がって見回している。
堀内が微笑む。
「ゲーム開始よ。お二人さん。ご活躍、期待してるわね」
バンバンッ バンッ
その音には聞き覚えがあった。
「矢島………!!くるぞ!」
思わずその手を握る。
「何が!!」
「あのときと同じだ!」
甘い香りが鼻腔をつく。眩暈がしてくる。
周囲の人間が次々に倒れていく。
瞼が熱い。暁斗は跪いた。
眼球が反転しそうに上を向く。
「ーーー矢島」
矢島も瞳を閉じて、前方に倒れこむ。
「……なんだよ」
「絶対、生き残れよ」
言うと、その目は暁斗を映した。
「―――そっちもな」
2人は手を握り合ったまま、意識を失った。
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