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「お早う、紘人(ヒロト)。」
「のあぁぁぁあぁ!?」
あまりにも不意、かつ予想外な挨拶に思わず紘人は変な声をあげると、イスから落ちそうになりながら慌てて後ろを振り向いた。
そこには初老で小太り、少し小柄で黒縁メガネをかけた、少し薄いが明るい茶色の髪の毛、をきっちり七三分けにした、黒いスーツをビシッと決めたおじさんが立っていた。
紘人は少し怯えながらおじさんを見た。
「だっ、誰?」
おじさんは無表情で答える。
「私か?私は『スペイシー佐々岡』。」
「す、スペイシー佐々岡?」
紘人は少し考えたがしっくりこない。というか、そんな知り合いが居たとすれば忘れないはずだ。
「失礼ですがどちら様ですか?もしかして人に化ける魔物か!?」
すると佐々岡は無表情のままため息をついた。
「この気高い私を魔物ちくしょうと一緒にされては敵わんな。私は天からの使者、読んで時の如く『天使』だ。」
(・・・バカなのかな?)
紘人は警察を呼ぶ覚悟を決めた。
紘人はポケットに入ったスマホに手をかけながら、佐々岡に質問した。
「佐々岡はなんでこの家に?」
「まだ17年しか生きていない小僧に呼び捨てにされるのも心外だが、単刀直入に言おう。お前は『勇者』に任命されたのだ。魔王討伐の勇者にな。」
(よし、警察を呼ぼう。)
そう思い紘人はジャージのポケットからスマホを取り出しだ。
すると佐々岡がパチンと指を鳴らした。
「そうはさせない。」
「!!!」
指を鳴らした瞬間、淡い青色の光が紘人のスマホを包んだ。
紘人は佐々岡を睨んだ。
「魔術か!!何をした!?」
佐々岡は無表情のまま無愛想に答える。
「『ガインケ』の呪文だ。スマホをよく見ろ。」
紘人がスマホの画面を見ると、電波が圏外になっていた。
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