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佐々岡はやはり無表情で続けた。
「驚いたか?」
「・・・・・・。」
紘人はなんとも言えない気持ちになった。
ふと思い出したかのように紘人は佐々岡へ質問した。
「まぁ、あんたが魔術が使えることに驚きもないし、100年前に急に魔王が現れたこんな世界だから、天使がいることに対して、さほど疑問もないけどよ。なんで俺が勇者だよ?そもそも今になってなんで勇者を作る必要性がある?結構うまくやってるじゃないか、魔王と俺達人間は。」
そして何より、紘人は天使がいたとしても、この人物が天使とは到底信じられなかった。綺麗に七三分けとはいえ、少しハゲ散らかっているし。
佐々岡は後ろで手を組み直すと、スタスタと居間を徘徊し始めた。
「確かに急な話ではあるな。しかし、今、この世界に起こっている事態も、火急を要するのだよ。最近、地震が多いことは気づいているな?」
「あぁ、やたら多いな。」
ここ最近、3日に一度は起こっている気がする。
「それはこの地球が崩壊しかかっているからだ。」
「・・・えぇ。」
紘人はポカンとした。
佐々岡は続ける。
「100年前、この日本に魔王が現れ、大規模な天変地異が起こったことはしっているな?そしてその時からこの世界に『魔法』が生まれたことも。」
「・・・あぁ。」
「簡単に言えば、難しい話は端折るが、その魔法と言うやつはこの地球そのものの力だ。そもそも、魔法の源『魔力』自体はこの地球ができた瞬間からある。それが100年前の魔王が現れた瞬間、飛躍的にその魔法の量が増え、貴様ら人間にもそれを扱えるものが現れた。」
(なるほどな。腑に落ちる点はある。)
「貴様ら人間や魔物が魔法を使うと、それは地球から、自分の体を媒体とし、魔法を使うことによって地球の魔力そのものを消費しているのだ。」
佐々岡は紘人を無表情のまま見る。
「魔法だけではない、草木が生まれ森が出来るのも、火山が噴火し山ができるのも、それこそ、貴様ら人間が生まれてくるのだって、大元を辿れば地球の魔力を消費している。」
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