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第一章 目覚めた恐怖
白川 瑞樹(しらかわ みずき)は、15歳。
今年、父の勧める高校へ進学した。
「瑞樹、お前は柔道部に入るんだ」
「ぼ、僕が!?」
中学生の頃は園芸委員会で、花や木を育てていた。
格闘技なんて、やったことがない。
しかし、だからこそだ、と父は言う。
「お前はΩだということに、胡坐をかいている。辛いこと、きつい事から逃げてばかりだ」
(園芸委員会、結構力仕事も多かったんだけどな)
それに、辛いことだってあった。
瑞樹は、草むしりが苦手だった。
雑草と言うだけで、抜かれてしまう野の草。
彼らだって、ちゃんと名前があり、花を咲かせ、実を結ぶのに。
心優しい瑞樹には、花壇の花のためとはいえ他の命を摘み取ることが苦痛だったのだ。
「とにかく、柔道部で心も体も鍛えなおせ! その弛んだ精神を、ピンと伸ばせ!」
(ひどいよ、父さん)
しかし、αの父に何を言っても無駄だ。
Ωの苦労など、伝わらないだろう。
そんなわけで、瑞樹は嫌々ながら柔道部に入部した。
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