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帰路
「さっきの椎野なんだったんだろうな」
「さぁ、何か言いたそうだったけど」
「にしても最近の村瀬はムカつくな」
そう言い、田中は拳を強く握る。
「なんか最近椎野さんに突っかかっているよね。何が目的なんだろう」
自然な戸崎の問いに、田中は眉を潜めた。
「まっ、どっちでも良いけどな」
その田中の言葉を起点に、戸崎は話題を変えた。
「そういえば、どうやってゴボウのこと調べるの?」
「あ、そういえばそうだったな」
さっきまで握っていた拳をそのまま顎に持っていき田中は考えた。戸崎はそんな田中をただ横目で見つめていた。
「そうだ! 桜井おばさんだ!」
「誰、桜井おばさんって」
「俺のお母さんの知り合いで今は八百屋をやっている。あの人ならゴボウの詳しいこと知っているかもな」
「じゃあ、早速明日行く? ちょうど土曜だし」
「そうだな。じゃ明日の朝九時に現地集合な。場所はわかるよな」
「商店街の二丁目でしょ、大丈夫!」
自身満々に笑う戸崎を見た田中は同じように笑顔を浮かべた。夕暮れの斜光が二人の顔を照らす。
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