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逝くことは、表裏一体
「ありがとう、零太。最後に、人間に戻る事ができたわ……」
「ちょ、待ってくれ。どうして、どういう事だ!」
話している間にも、彼女の実感が、どんどん希薄になっていく。
「私の肉体は、とうに滅んでいて。辛うじて、魂だけが人に見える形になって、貧乏神として、地上にとどまっていたのよ」
つまり、呪いを解くと言うことはー。
「なぜ、何で言ってくれなかったんだよ! 消えてしまうってことを!」
天子は、切なくアハハと軽く微笑んだ。
「人を不幸にしていく存在が、この世にとどまってちゃいけないのよ……」
彼女の姿が透けて、次第に見えなくなっていった。
「さよなら、最後にあなたに会えて良かった。今度は、福の神になって、たくさんの富と幸せをあなたにあげるから。だから、ね」
チュッ
彼女は、オレの頬にキスをした。
「き、消えた……」
部屋には、食べ掛けのケーキが二つ、残っていた。
~終わり~
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