三人の記憶

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三人の記憶

「ここどこかしら?」  女装男子、もとい女装男性が顔をキョロキョロした。 「え、男性が、きゃーーーーー」  そのおっさんは悲鳴半分、ニヤけ半分で叫んだ。 (いや、何叫んでんだよ!!) 「知らない人がうちにいるわーーー」 「待て待て。だから、ここは僕の部屋だって」 「嘘よ!!」 「周り見てみろって!!」 「……あら本当。確かに知らない小汚い部屋ね」 (余計なお世話だ!) 「貴方……おかまバーのシノブさんじゃない?」  僕の手前の少しはだけて色気のある女性が言った。 「どうして私のこと……。あら、貴女こそ街のキャバクラで働いているヒカルちゃんじゃないの??」  どうやら二人は知り合いらしい。  つまりこういうことか。僕の部屋で僕が知らない二人がいて、二人は知らない部屋に知り合い同士がいる。  いや、どんな状況だよ!? 「貴方は誰よ!?」 「そうよ! 貴方こそ誰よ!?」 「僕はこの部屋に住んでいる貴島という者だよ!!」 「けどこの状況何か妙じゃない?」 「まあな」 「私達知り合いが知らない男の人の部屋にいるなんて」 「ま、まさか……」  僕の奥側に座っているおっさんが言った。 「私達誘拐された??」 「えっ!?」 「え!!?」 (何アホなこと言っているんだ!? そんな訳……) と思っていたら、急に彼女が蒼白になって、 「け、警察に連絡しないと!!」 「待て待て! 違う違う!」  二人に分かってくれるか分からないが、一応僕に起きたことを説明した。 「……覚えてない……ね」 「そう……ね。確かに私もバーからの記憶があまりないわね」 「……」  どうやら二人も昨日の記憶があやふやらしい。  僕達に一体何があったんだ?? 「昨日、私はクラブでいつものようにお客さんの対応をしたの」 「私もバーに来た人達とじゃんじゃんお酒を吞んだわ」 「私もお酒を吞んだよ~な……」 「僕も飲み屋に行ってから沢山吞んで覚えてない……」  僕達はうーんとうねった。しかし思い出せない。 「……まぁ、とりあえず服着ない??」 「そ、そうね。恥ずかしいから」 (おっさんがそんなこと言うなよ!)  こうして二人は服を着ていると、彼女があら、と言った。 「何かしらこれ?」  服から取り出したのは、◯◯商事 山岸健と書いてある名刺だった。
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