第一章 航海前 第十節 前夜祭 その3

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「・・・なるほど、そいつはいいですナ!それだけ居りゃー、黒番犬どももおいそれと手はだせないでしょう・・・パプラ船長、アッシがブルアンと・・・フェルトさんと、宿に残りますが、それでいいですかね?」  グリンドーはパプラ船長の方に向く直前に、ひそかにオレージナと目で合図を交わしたのだった。 「よし・・・そうしよう、明日の朝10時に出港だ!皆、遅れないように!」  パプラ船長の言葉に、皆、それぞれに返答した。 「アイ、キャプテン!」 ******  機関士レッドン、パプラ船長、航海士オレージナ、船医のブラーウが走砂艇ドマーロに向かって歩いて行くのをブルアンとグリンドーはしばらく見守っていたが、やがて───グリンドーが口を開いた。 「ブルアン坊ちゃん・・・」 「え?何?グリンドーさん」  ブルアンはグリンドーの右腕に掴まるようにして彼を見上げた。 「明日から本当の航海が始まりますが・・・坊ちゃん・・・覚悟はできてますかい?」 「え?!」  ブルアンは、グリンドーのやや緊張感のある厳しい言葉を初めて聞いたような気がした。 「グリンドーさん!・・・覚悟はあるよ!大変なことがあるかもしれないけど・・・僕、勇気を出して頑張るよ!・・・でも、もう今夜みたいなドジは踏まないから・・・」  ブルアンの言葉は少し歯切れが悪かったが、グリンドーはまたニッコリと笑ってブルアンの方を向いた。 「ヨーシ!ブルアン坊ちゃんがその気なら、アッシも応援させてもらいますぜ!・・・さーて、宿に戻ったら口うるさいフェルトさんも喜ぶような、面白い航海の話をさせてもらいますぜ!・・・美味しいツマミも沢山残っているでしょうから!」 「わあっ!楽しみだなー!」  ブルアンは思わずそう言って笑顔をグリンドーに向けた。  ───そして、月が照らす薄青い道を二人は宿に向かって戻って行った─── 第一章 航海前 End ◇いよいよ来週から、第二章「大海原をゆく船」を、別の本でスタートさせます!  お楽しみに!
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