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「・・・で、その役をブラーウ先生に回したと?・・・そういうことかい?」
オレージナは少々怒りを露わにし始めた。
「いやいや、オレージナ、ブラーウ大先生は人造娼婦が通常起動する前のブート段階で一旦停止させて調べられると踏んでいるんだがね?・・・そうじゃなきゃ、頼みやしないさァ!」
「まぁ・・・レッドン君の言うとおりだ・・・人造娼婦をセーフモードで起動して、AI頭脳が通常動作に入る前にシステムの状態を確認して、場合によっては初期パラメータを変更することもできる・・・いきなり首を絞められることは無いと思うよ」
ブラーウは主にオレージナの方を向いてそう答えた。
「ふーん・・・難しいことはわからないけど・・・先生が言うなら間違いは無いンでしょう!・・・でも、ちょいと心配だから、その起動のときはアタシも立ち会うよ!・・・アンタもだよ!レッドン!」
「そう、怒るなよオレージナ嬢ちゃん! 元からそのつもりさァ!」
大人たちの会話が何を意味しているかをブルアンはだいたい承知はしていたが、子供の自分としては発言できるタイミングもなく、少々居心地が悪くなってきていたことも事実であった。
(そうだ!グリンドーさんが作ったこのフライドチキンやフライドポテトを、船の見張りに行った二人のところに持って行こう!)
ブルアンは大人たちが人造娼婦のことで、ああでもない、こうでもないと話している隙をみて、こっそりと厨房に行くとバスケットにお替りのフライドチキンやポテトを詰め込んでナフキンをかけ、静かに厨房の裏口のドアから外に出て行ったのであった───
******
「おや? ブルアン坊ちゃんはどこに行ったんだ?」
ブルアンがいないことに最初に気づいたのはグリンドーだった。
「そういえば・・・さっき厨房の方に行ったようだったけど?」とオレージナ。
オレージナの言葉にグリンドーはサッと立ち上がると厨房に駆け寄って中を見た。
「いないぞ!・・・まさか外に出て行った?!」グリンドーの口調はわずかに緊張していた。
「夜に一人で?!まずいね!」オレージナが応じた。
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