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第一章 航海前 第十節 前夜祭 その2
(いつもは良く知っている道だけど・・・夜歩くと結構遠いな・・・)
港に続く坂の小道をブルアンはやや小走りに下っていく。
周囲はほとんど真っ暗の状態であったが、夜空に浮かぶ半月がおぼろげに小道を照らし出していた。
もうすぐ、並行して通っている商店街のやや幅の広い道と合流するが、その商店街も商店がちらほらあるだけで、ほとんどが閉店の状態でゴースト商店街と化しており、街灯もところどころにポツンとあるばかりであった。
暗い小道を抜け、商店街と合流する手前でゴースト商店街のほのかな明かりが見え、ホッとしたブルアンはやや歩調を緩めたのだが───
「動くな!動くと刺すぞ!」
昼間と同じような台詞だったので、一瞬、オレージナかと思ったブルアンであったが、その声の主はもう少し若い女の声に思われた。
わずかに戸惑った隙をつかれ、ブルアンは右の背中に剣の切っ先が軽く押し当てられる感触を感じていた。
「き、君は誰だ?!」
ブルアンはやや右後ろに首を回しつつ尋ねる。
「こっちを向くな!刺すぞ!」
右の背中に押し付けられた剣の切っ先がチクリと背中を刺した鋭い痛みを感じ、ブルアンはビクッと体を硬直させた。
「分かった!向かないよ!・・・でも、教えてくれ!君は誰なんだ?!」
「・・・お前がブルアンとかいう小僧だな?」
年の若い女・・・いや、少女とも思える声の主は言った。
「小僧なんて言うな!!」とブルアン。
「フン!・・・オレはケルガ・・・兄貴は黒番犬だ」と女。
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