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「・・・そうなんだ、会ったよ、その黒番犬には・・・じゃあ、君はその妹かい?」
「・・・そうだ・・・でも、女と思って舐めるなよ!・・・どう見てもお前のほうが年下だ!力もオレより弱そうだしな!・・・港まで大人しく歩いて行け!」
背中にまた剣の切っ先が突き立てられ、わずかだが鋭い痛みを感じブルアンは仕方なく港に向けてゆっくりと商店街の道を歩きだした。
ブルアンは、フライドチキン、ポテト、お替りのラノム酒の瓶を1本入れたバスケットを両手に抱えていたので、いきなりダッシュして逃げることは難しいと思った。
「あの・・・ケルガ・・・さん?」
ブルアンは前を歩きながら尋ねた。
「・・・なんだ? 少年」
剣を突き立てられても、思ったよりブルッていないブルアンを見て、小僧というのはやめたらしい。
「君たちの船は饅頭島の後ろに停泊しているんでしょう? ここまではどうやってきたのさ?」
「・・・フン、ボートさ・・・港の堤防の陰に着けてある、オレの仲間もそこにいる」
(ボートには仲間もいるのか!・・・その前に何とか逃げないと・・・)
ブルアンがそう思っているうちにも港に近づき、遠くに走砂艇ドマーロのシルエットが見えてきていた。
「もうすぐだ・・・おっ!」
ブルアンの後ろに付いてきたケルガが左手を上げて合図をすると、堤防の下からどうやら梯子を使って登ってくる男のシルエットが見えた。
「ヨォッ! ケルガ! でかしたな! 小僧っ子を捕まえてきたのか!」
やや太り気味で、頭に黒っぽいバンダナを巻いた口ひげの若い男だった。
「ああ!張っていた甲斐があったぜ、レンゴン!」
「おお、そうだな・・・ん?・・・何かいい匂いがするじゃねえか?」
レンゴンと呼ばれた男は小走りにみるみるうちにブルアン達の元にやってきてしまった。
(どうしよう?)
ブルアンは逃げ出すタイミングを失いかけていた。
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