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第一章 航海前 第三節 料理番
ブルアン少年は、カッパード神父と料理番のグリンドーに黒死海古文書の古文書を単語の拾い読みで話し始めたが、ある程度読み進んだところで料理番が口を挟んだ。
「なるほど・・・ちょっと、分かってきましたよ。ブルアン坊ちゃん」
「えっ? 今、読んできた単語だけで何か分かったんですか?」
ブルアンは自分としては、とりあえず単語を読むだけだったので、あまり意味を読み取ることが出来なかったのではあるが・・・
「あたしも驚いてますがね・・・これは、海賊に大昔から伝わる伝説と大きな関係があると思いますね? あたしも前は海賊が乗る船で働いていたことがあるもんでね!」
料理番のその言葉にブルアンは興味深々となった。
「それは、一体どんな伝説───」ブルアンがそこまで言いかけたとき、宿屋の扉が開かれて気密マスクと防護マントを付けた二人の葬儀屋を従えたブラーウ医師が入ってきた。
「待たせたね、ブルアン君。 ああ、カッパード神父、もう来ていたのか?・・・で、こちらの方は一体どなたかな?」
ブラーウ医師は宿の食堂の常連で飲んだくれのカッパード神父とは昼間にも話をしていたのだが、料理番に会うのはブルアンと同じく、当然初めてであった。
「ブラーウ先生。こちらはカッパード神父さんが呼んだ料理番で、グリンドーさんです」
ブルアンは椅子から立ち上がりつつブラーウ医師に紹介した。
「なるほど・・・君がカッパード神父が言っていた『人集屋』なのか? 初めまして、私は医者のブラーウだ」
ブラーウ医師は料理番に右手を差し出した。
「ああ、これは初めまして! ブラーウ先生! あたしは料理番のグリンドーです。多くの航海で料理番を務めましたんで、いろいろと人脈がありますんで!」
料理番のグリンドーはにこやかに右手でブラーウ医師の握手に応じた。
「ふむ・・・よろしくグリンドー君」とブラーウ医師は少し素っ気なく答えた後、ブルアンの方を見た。
「ブルアン君。それではお父さんを葬儀屋に任せることにするが、、、お父さんとは棺桶越しでしかお別れを言えないが、、、それでいいね?」
「はい、ブラーウ先生」
ブルアンはそう答えつつ、2階に上がっていく二人の葬儀屋を見送った。
「あのー、それでですね、ブラーウ先生?」
料理番が少し言いにくそうに口にした。
「先生がいらっしゃる少し前に、ちょっとならず者が来てましてね」
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