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「ごめん、ちょっと慣れ慣れし過ぎだよね?」
「あ、いや、その…」
ハチ君パパは更に手を優しく握りしめる。
「暦ちゃんママと暦ちゃんが健気に僕達を待っててくれて、なんか胸がジンとして。
ごめん、こんな事しちゃって」
それでもまだ手はポケットの中…
そんな今日のハチ君パパは、ジャケットの下はスーツ姿だった。
「あの、もしかして、今から仕事ですか?」
ハチ君パパは残念そうに頷いた。
「ごめんなさい…
私があんな約束をさせちゃって」
「ううん、いいんだ。
僕も暦ちゃんママに話があったから」
話? 何の?
私は期待で胸が膨らんだ。
「実は、暦ちゃん達と会えるのも今日が最後なんだ…
寂しいけど」
最後って?
「実は引っ越しが決まってて、もうこの公園には来れないんだ。
ハチと暦ちゃんを引き裂くのは辛いんだけど、こればっかりはどうしようもなくて…」
私はハチ君パパのポケットに入っている自分の手をすぐに引き出した。
「そ、そうなんですね…
暦になんて言おう…
毎週、日曜日のお散歩を心待ちにしてたから…
ハチ君に会えなくなるなんてきっとショックでご飯も食べれなくなっちゃうかも…」
暦を思って言っている言葉が自分の胸に沁み込んでくる。
涙が出てきそう…
ハチ君パパは暦とハチにキスをしている。
ごめんなって呟きながら。
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