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角刈りで小太りと、筋肉質で浅黒い、二人の男がうらぶれた様で歩いている。ふと角刈りが叫ぶ。
「俺たちには金がない!」
「身も蓋もねえな兄貴、まあ100%その通りだけど」
冷静に突っ込む筋肉質。
「メシ代どころか、散髪代すらないのだっ!」
「威張って言う事でもない、っていうか兄貴の髪じゃ、説得力ゼロだろ」
「そこでっ、仕方なく犯罪に手を染めようと思うっ!」
「そこはちょっと、言い方に罪悪感をにじませてほしかったところだな」
ぼやく筋肉質、だが顔を覆ってため息をつく。
「まあ仕方ねえな、こんな有様じゃ俺の筋肉も維持できねえし…、で、兄貴、どんな犯罪をするつもりなんだ?」
「聞いて驚くな、『誘拐』だあっ」
「え…?」
「子供を誘拐して身代金を要求するっ!」
「それって成功率むっちゃ低くねえ? 無理だろ」
「いやっ、うまい方法を考えたんだ、これで行くぞおっ!」
駆け出す角刈り兄貴を、追い掛ける筋肉弟分。
「あー、目が血走っちゃってら、これはダメだな…、ああ付き合うしかないか、はああ…」
「あれだ、幼稚園帰りのあいつだっ!」
年少らしいその子供は、肩にカバンを掛け、トコトコと一人で歩いている。
「え、ええー、どう見ても普通の子供だろ。リムジンでお出迎えとかじゃないのか」
「そんな子供は俺たちの手に余るだろっ」
「誘拐犯になろうというヤツの台詞じゃないぞ」
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