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「そいつは、祭りの日に、子どもをさらって地獄に連れてく鬼だ!
危ないよ!
君、早く、離れて!」
「え……ええええっ!?」
急にそんなことを言われたって!
俺と着物の男の手はしっかりと握られているし、男は俺と手を離す気はないようだった、
男は、ぎゅう、と俺の手を握り締めたまま、怒鳴った。
「本当は、お前が欲しい所をコイツに変えてやるんだろ!?
お前の大嫌いな化け物の居る異界に、攫(さら)われたくなかったら、邪魔はするな!」
そんな男の言葉を、俺の方でも聞き返した。
「異界って何だよ!
あんたは、コタロウに会わせてくれるって言ったじゃないか!」
「ふん、その猫がいる所が、まさしくそれだ。
オイラはウソをついて無いぜ!」
着物の男は、そう言うと、今まできっちり着ていた着物を脱ぎ棄て、無表情だった顔を仮面を剥がすように跳ね上げ正体を晒すと、改めて、俺の手を引っ張り、怒鳴った。
「さあ、小僧! 俺と来い!」
叫んで出て来た大きな二本角の青鬼の前で、俺たちの「うぁぁ!」という悲鳴が、重なった。
口々に叫ぶ『怖いよ』の声を無視して、面鬼は、俺の腕を掴むともう一人の子どもに向かってやりと、笑う。
「お前も、自分の守護妖を怖がって逃げ回っているようじゃ、どんなおひとよしの妖でも、いずれ愛想を尽かすだろ?
そしたら、今度は、本命、お前の番だ!」
「待てよ! そいつは、全く関係ないだろう!」
震える声で、なんとか勇気を振り絞ったらしい。
俺を取り返してくれようとする、少年の言葉に面鬼が笑う。
「なに、神職の息子で霊力のあるお前にゃ劣るが、コイツからもいい匂いがするからなぁ~~
地獄に着いたら、散々遊んでやるよ」
そう言い放ち、着物を脱ぎ棄てた青鬼は、俺の手を引っ張って、よろめいたところを抱きかかえると、異界への入り口とやらがある方向にひょーい、と飛び上がる。
このままでは、俺は青鬼に連れさらわれてしまうコトが、確実だった。
地獄とは、死んでから行くはずなのに、生きたまま連れていかれて、そこでナニをされるのか、怖くなる。
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