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「……たすけて」
青鬼に連れて行かれそうになりながら思わず、口をついて出た俺の言葉に、小さいけれど、神主姿の子どもの肩がぴくり、と震えた。
「無駄だよ坊主。
コイツは弱虫だから、オトモダチでもない見ず知らずのお前を助けることなんて、出来ないさ」
コイツの唯一にして最大の力は、妖の力に頼る事なのに、その味方の妖でさえ、怖がって逃げ回っているんだから、とてもとても無理だと鬼は、笑う。
青鬼もかくや、と思うほど、青ざめたアイツの顔色を見るにつけ。俺も鬼と同じ意見だったけれども。
俺には、今、頼れるのは、コイツしかなくて……!
「助けて……ん…ふ」
多分、無理だと思いながらも、言ってみた言葉は、えい、煩いとわめいた青鬼に、唇で塞がれた。
それをアイツは見たらしい。
俺は鬼に覆いかぶさるように抱えられ、アイツが視界から消える寸前だった。
今まで、色々とためらっていたようだったアイツが、何かを呼んで叫んだ。
『鵺!』
ぬえ?
何だよ、そりゃ!?
唇を青鬼に塞がれて、嫌だ、気持ちが悪い、とじたばたしている俺達に向かって、突っ込んで来るモノがあった。
それは、頭が猿、手足が虎で、尻尾が蛇のモノ。
字面では、恐ろしげだが実際は、なにやら可愛げがあるヤツだった。
神主姿のアイツが、勇気を出して自分の守護妖とやらをを呼び出してくれたらしい。
そいつが俺を助けようと、青鬼めがけて、突っ込んで来てくれたのは、とても嬉しかったけれども……
いかんせん、場所が悪かった。
鬼は、俺を抱きかかえ、丁度神社の脇を流れる川の上を飛んでいたんだ。
川の上で、がしっと、二匹の妖怪が、ぶつかった結果、どうなるか?
俺は青鬼の手から離れ、当然のように、川の中に落ちたんだ。
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