二章

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 学校での授業で『着衣水泳』なんて事をやってたから、水着ではない、服での泳ぎは、とても大変だって判ってた。  しかも、落ちたところは、管理された穏やかなプールなんかじゃない。  ずれ込んだ梅雨の長雨で、水かさの増した川だった。  水の流れは、とんでもなく早く、深い。  そこに、俺は服を着たまま飛び込んだ。  俺の手足は、吸いついて重くなった服と、水の流れに拘束されて、もう、笑うしかないほどの速さで、水の中に吸い込まれてゆく。  そんな俺が、最後に口の中に残った空気を吐いてしまった時。  泡の間から、とんでもなくキレイなモノを見た。 1ee36974-0e2b-4b4b-92a7-be2a62cf8c39  石のように水に沈んでゆく俺に、これ、が何だかは、さっぱり判らなかったけれども。  ああ、俺。  これを見ながら、死んじゃうんだな……なんて。  変に冷静な気分のまま。  意識が無くなるまで、この、青く輝くキレイな妖怪を、眺めてた。
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