二章

9/23

105人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
   ………  ……  ……っ、きゃあああああ!  なんて言う、子どもの悲鳴で、目が覚めた。  ……どうやら、まだ俺は子どもの頃の夢を見ている最中で、この悲鳴は、一応俺のモノではないらしい。  今まで、一度も見たことのなかった青鬼と鵺の衝突に、巻き込まれ。  落ちた川の中に、青く輝くキレイな何かを見た、と思った後の続きのようだ。  魂消るような子どもの悲鳴が、やけに長く続く。  ココはどこか、と不安になりながら目を開けると、見知らぬ和室に布団が三組敷かれ、そのひとつ、真ん中に俺は寝かされていた。 「ん、起きたね、子ども」  俺が、目を開いたのに、気がついたらしい。  左側の布団にうつぶせになって、俺を覗きこんでいる男が、声をかけてきた。  右目を包帯で隠した、やけに色っぽい男だった。  俺から見える残った目は紅く、不思議な色をしている。  けれども、着物をはだけるように乱し、けだるげにこちらを眺める姿は、とてもキレイだ。  怖いというをより、じっと見てるとなんだか心臓が勝手にドキドキしてくる。  相手は、男だって言うのに。 fde3f92b-10e6-40e1-9086-79b1d3d022ed 「ここは……どこ?」  じっと黙っているには居心地悪くて質問すれば、彼は紅い目を、軽く細めた。 「ん、ここは、ね。『中有郷(ちゅううきょう)』ってところさ。  異界と現世の中間にある場所で、普通、人間は入れないはずなんだけどね……お前達は水に溺れる寸前に『水妖(すいよう)』って言う奴が、運んで来てくれたのさ」 「水妖……? 俺『達』?」  きっと水妖は、水の中で出会った、とてつもなくキレイな女のヒトに違いなかった。    でも、俺達って……?  鵺の体当たりで、水に落ちたのは、オレだけのはずだった。  他に、誰がいたんだろう?  まさか、俺を攫おうとした面鬼とか……と嫌な予感がしたけれども。  紅い片目の男は、俺の右側にこんもりと膨らんでいる布団の塊を優雅に指差した。 「このヒト。  川に落ちたお前を助けるために、続いて飛び込んだのさ。  チビのくせに優しくて強い所は、一応、自慢の主(あるじ)の息子、なんだけどね」  どうやら、布団の塊にの中にはヒトが……子どもがいて、まるまり、震えているらしい。  その、小刻みに震える布団の山を呆れたように眺めて、ため息を吐いた。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加