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………
……
……っ、きゃあああああ!
なんて言う、子どもの悲鳴で、目が覚めた。
……どうやら、まだ俺は子どもの頃の夢を見ている最中で、この悲鳴は、一応俺のモノではないらしい。
今まで、一度も見たことのなかった青鬼と鵺の衝突に、巻き込まれ。
落ちた川の中に、青く輝くキレイな何かを見た、と思った後の続きのようだ。
魂消るような子どもの悲鳴が、やけに長く続く。
ココはどこか、と不安になりながら目を開けると、見知らぬ和室に布団が三組敷かれ、そのひとつ、真ん中に俺は寝かされていた。
「ん、起きたね、子ども」
俺が、目を開いたのに、気がついたらしい。
左側の布団にうつぶせになって、俺を覗きこんでいる男が、声をかけてきた。
右目を包帯で隠した、やけに色っぽい男だった。
俺から見える残った目は紅く、不思議な色をしている。
けれども、着物をはだけるように乱し、けだるげにこちらを眺める姿は、とてもキレイだ。
怖いというをより、じっと見てるとなんだか心臓が勝手にドキドキしてくる。
相手は、男だって言うのに。
「ここは……どこ?」
じっと黙っているには居心地悪くて質問すれば、彼は紅い目を、軽く細めた。
「ん、ここは、ね。『中有郷(ちゅううきょう)』ってところさ。
異界と現世の中間にある場所で、普通、人間は入れないはずなんだけどね……お前達は水に溺れる寸前に『水妖(すいよう)』って言う奴が、運んで来てくれたのさ」
「水妖……? 俺『達』?」
きっと水妖は、水の中で出会った、とてつもなくキレイな女のヒトに違いなかった。
でも、俺達って……?
鵺の体当たりで、水に落ちたのは、オレだけのはずだった。
他に、誰がいたんだろう?
まさか、俺を攫おうとした面鬼とか……と嫌な予感がしたけれども。
紅い片目の男は、俺の右側にこんもりと膨らんでいる布団の塊を優雅に指差した。
「このヒト。
川に落ちたお前を助けるために、続いて飛び込んだのさ。
チビのくせに優しくて強い所は、一応、自慢の主(あるじ)の息子、なんだけどね」
どうやら、布団の塊にの中にはヒトが……子どもがいて、まるまり、震えているらしい。
その、小刻みに震える布団の山を呆れたように眺めて、ため息を吐いた。
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