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「おい! あんた! ……っと、名前なんて言ったっけ?
ま、そんなのどうでもいいけど、吸血鬼がどっかに行っちゃったよ!
ここで、ずっと布団にくるまってていいのかよ!」
すると、神主姿の子どもが布団を着たまま、ころん、と目の前に転がって来てつぶやいた。
「僕は風音(かざね)。
吸血鬼を放っておくわけにはいかないけど、怖いんだよ~~
君は、良く怖くないな」
「君、じゃない! 俺は龍堂力也だよ!
確かに、血を吸うのは怖いけど、ただの寂しそうなだけの、やたらキレイな兄ちゃんじゃないか!
お前が……風音がちゃんと布団から出て、相手してやれば、良かったのに!」
「だって、アイツ! ヒトの首にぶすりって牙を刺して血を吸うんだよ?」
「吸血鬼なんだから、血を吸うのなんて当たり前じゃないか!」
当たり前のことを当たり前に怖がるなんて!
俺は、この時、頭が煮えそうになって叫んだけれども、何にも判ってないのは、俺の方だった。
吸血鬼の兄ちゃんが、あんまりキレイで儚なかったから、全く実感が無かったけれど。
人間、血が無くなれば死ぬ。
そんな当たり前のことも判らずに、俺は、風音を弱虫だと罵(ののし)り、布団から引っぱり出した。
妖がどんなに恐ろしいモノか知らないままに、「コタロウ」を探してよ、と無茶を言う。
期限は川ほとりの神社の盆踊りが終わるまで。
そんな風にいきなり制限された時間のことも気になった。
こんな所で、布団を被っているだけじゃ、ただ、時間が過ぎてしまう!
何もせずに、時間切れになることだけは、絶対嫌だと叫び、布団を剥がして押し切ろうとした時だった。
突然、風音が『うっひゃっひゃ!』といかにもくすぐったそうな声を出したかと思うと、きゃーと叫んで自分から布団を飛び出して来た。
「か……風音?」
いきなりのことに驚けば、布団の塊の影に隠れて、もう一人だか……一匹だかが隠れていた。
どうやら、紅い髪の子どもらしい。
俺や風音と同じぐらいの年に見える。
身体に似合わない、大きなお櫃を持ち、中の白米を食べ食べ、風音の足の裏をくすぐったんだ。
なんだこいつ、と思わず怪訝に睨んだ俺の代わりに、年齢が近くて元気が出たのか、風音が叫んだ。
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