二章

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「何するんだよ、赤しゃぐま!」  大声を出した風音の声にびくともせず、その赤しゃぐまは、手についた米粒をぺろぺろ食べながら、言った。 「おう!  吸血鬼の兄さんが言ったことは本当だよ。  時間が無いって言うのにさぁ。  怖がり坊主が、布団から出ねぇって言ってるから、ちぃとばかし、手伝ってやったんじゃねぇか」  怖がり坊主が、ココに住むって言うなら、大歓迎だけど。  ちょーーっと、坊主の神経が持ちそうもねぇからなぁ、なんて。  この赤しゃぐまもまた、ため息を吐いたかと思うと、俺達を部屋から追い出しにかかる。 「さあ、行った行った!」  けれども、そう、元気に言われても…… 「どこを探して歩けばいいのか、判らない……」  風音は中有郷には、何度か足を運んでそうだったにもかかわらず。  途方に暮れたつぶやき声に、赤しゃぐまは、沢山米粒のついた手をすぅ、と一点に指差した。 「獣は獣同士、尻尾が割れたら割れた者同士、仲良くやるって決まりらしいぜ。  猫に取りついて日の浅い、ネコマタ殿は、尻尾割れ大先輩の九尾の狐にでも挨拶しに行ったんじゃねぇか?」  尻尾割れ大先輩って、なんだよ!  俺はそう、突っ込みたかったのに!  赤しゃぐまは、案外強い力で俺たち二人の首根っこをひっつかむと、ポーイっとばかりに部屋から放り出した。  途端に。  今まで布団を被って寝ていたはずの部屋が。いいや、家自体が、どろんと消えて戻れなくなったんだ。  俺達は、広い野っぱらに呆然と立ち尽くしたけれども。  被って震える布団、とか。何もなくなってしまった以上、これはどんな怖がりだって、もう、前に進むしかない。  手を引っ張る俺の後を、風音は、及び腰のまま、ようやくついて歩く事になったんだ。
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