![25c34052-ca61-4bb7-8c4e-048d0a0f6fd0](https://img.estar.jp/public/user_upload/25c34052-ca61-4bb7-8c4e-048d0a0f6fd0.png?width=800&format=jpg)
立派な九本の尻尾を持ち、まるで王冠のように美しい毛皮の耳が頭の左右を飾っている。
この豪華な館の主(あるじ)らしい、九尾の狐、自身だったんだ。
青白い炎に照らされた、凛、と美しい立ち姿だった。
白地に緋の入った麗しい神主のような服を着て、左手に白地に茶色の斑点のある、二本尻尾の猫を抱えている。
俺が、ずっと探していたコタロウだ。
そして……もうひとつ。
とても気になる記憶に、言葉が口をついて、でた。
「「お母さん……」」
これも、隣に抑え込まれて居る風音と重なってびっくりした。
豪奢な館から出て来た九本尻尾の狐は、とてもキレイだとはいえ明らかに……間違えようもなく『男』の姿をしている、というのに!
しかも、よりによって、声を合わせて『お母さん』呼ばわりだ。
風音の方は、恥ずかしかったのか……怖いのか。
あっという間に顔を伏せてしまったけれども、俺は、この九尾の姿から、目が離せなかった。
じっと見つめる俺に、九尾の狐は、ふっと息を吐いた。
「我は雄である上、一人身だ。
貴様らから母親呼ばわりされる覚えはない。
……が。
我には、二人の妹がいたな。
どちらもヒトに心を奪われ、恋をして……今では、一人がチリとなり。
もう一人は、消える寸前まで、力を落としてしまったが」
言って九尾の狐は、俺を睨(ね)めつけるように見た。
「今、我は思案の最中なのだよ。
二人の妹を失ってなお。
ヒトを愛しく慈しむか、それとも、憎むべきか」
母さんに良く似た狐の妖には、妹が二人、だって?
もし、予感と話しているコトが一緒だと言うのなら!
この九尾の狐が俺の母方の伯父で……この怖がりな風音は……従兄弟って事になる。
……聞いて無かった。
母さんがずっと前に死んだ、という以外、何も。
俺の母方に、従兄弟や親戚がいる事さえも、全く知らなかった。
一族だの『何代目』とかにこだわる家系のはずなのに、母方の親戚と付き合っていなかったのは、やくざなどじゃなく、普通の一般家庭だったからじゃないのか。
この九尾の狐の言っているコトが良く判らない。
「狐……」と思わず呟けば、九尾の狐は、不機嫌そうに俺に言った。
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