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……だから、最初に、風音は百鬼夜行の流れに乗ってはいけない、と言ったんだ。
思い出した言葉を噛みしめる間もなく、風音は話を続ける。
「……けれども、中有郷はともかく『異界』では、人間の姿のまま、入れません。
だから、百鬼夜行で流れてゆくうちに、その身の罪の重さに合った異形に外見を変えられてしまうんですよ。
……こんな風に」
と、風音は、自分自身を指差し……俺は、見た。
風音の姿が変わるところを……!
鋭い乱杭歯にねじれた角。
その姿は、まさしく『鬼』だった。
強く……哀しく、美しく……
怒りに震える姿は、目が離せない。
九尾狐の妹が母だと言うのなら、狐の姿になり変わるのが、道理のはずなのに。
鬼にになるほどに強い感情は、神社を破滅に追いやり、中有郷を消し飛ばした『龍堂家』……俺に向かっているに違いなかった。
「わ……悪かった! 俺が悪かった、許してくれ!!」
思わず口走る俺の声に、鬼になり変わった風音の目つきも、変わる。
「ふうん? 力也は、自分の『何が悪かった』って思うんです?」
怪しげな風音の声に、俺はしどろもどろに答える。
「……オヤジが地上げをして神社を無くしただろう!
中有郷が、無くなった事も……」
「……全部、力也の親父さんがやったことで、力也自身は、全く知らなかったんですよね?」
「ま……まあ、そうだが、ああ!
診察中に、俺を狙った他の組の騒ぎに、お前を巻き込んだ事、とがだな……!」
これは、俺の責任だ、と叫ぶ声を、風音はそっと笑って否定した。
「ええ、まさか、誰にも絶対秘密の診察中。
看護師がたまたま席を外したなんて言うタイミングに、よりにも寄って敵対する組織が入って来るとは思わなかった、でしょう?」
「ああ、そうだな……って、は?
おい風音!!
お前、今、何を言ったんだ!?」
風音の一言に引っ掛かった俺は、目を見開いた。
それ。その言い方では……まるで……!
驚く俺に、風音は、静かに答えた。
「龍堂組の敵対勢力に通じて、あなたの情報を漏らしました。
あなたを刺したのは、僕ではありませんが、僕自身があなたを刺したのと、同じ……です」
何だって!
風音が、龍堂組の敵対組織を手引きして、俺を襲わせたなんて。
とても、信じられねぇ!
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