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俺の姿も、変わる。
妖の……鬼の姿に。
やくざ、なんて、利益のために簡単に人を傷つけて生きる俺もまた『狐』の姿に収まるには、業が深すぎたんだ。
口の中に違和感を感じたかと思うと、急に歯がにゅっと飛び出て来た。
手には鋭い爪が生え……頭の耳の上が重い感じがするのはきっと、角でも生えたんじゃねぇかと、そう思う。
業により、鬼になり変わったのなら、もう、百鬼夜行から逃げられない。
行き先は、異界。
そして『死』だ。
すっかり姿が、変ったらしい俺を見て、風音が叫んだ。
「力也……っ!」
ああ、泣く。
風音が、泣く。
鬼の目に、涙をいっぱいためて。
ぽたぽたと落ちた水滴が、俺の頬に、二、三滴落ちて来た……と思ったとたん。
風音は、締めていた首を外して、俺の胸に、飛び込んで来た。
「……何だってっ……!
あなたは、そうなんですか!?」
「……ああ?」
「子どもの頃、あなたは、僕にあっさり肝っ玉を譲り!
今も、また死んでも良いと言う!
どっちも、理不尽だと怒って良いことのはずなのに……!」
叫ぶ風音に、俺は笑った。
「さあな。
確かに、怒って良いことなんだろうけど……結局。
……俺は、お前が好きなのかも……しれねぇな」
「……あなたは、莫迦です!」
風音が、叫んで俺の胸を拳でトン、と叩いた時だった。
元は神社だった駅裏の空家の近くから、今まで一度も聞いたことのない鳥の鳴き声が聞こえた。
ゲッグ ゴゲゴッゴォォォォーーー
もっと爽やかな声だったら、きっと朝を告げる雄鶏にでも聞こえたろう。
けれども。
地を這うとんでもなく大迫力の声に、俺と風音は顔を見合わせた。
「……何だ、この声は!?」
「コカトリスの鳴き声です!」
そう。
現在の時刻は、4時44分。
百鬼夜行の夜が明け、異界への扉が開く時間だったんだ。
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