105人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ
「あなたが……もし……例え、ここで死んでも。
こんな良い人が、異界で妖に傷つけられたらいけません。
地獄に落ちてもいけません。
あなたに借りたモノのかわり、いただいた想いのかわり。
あなたの業も、僕が引き継いで、この世を去ります」
「風音!」
一人では、逝くな!
俺は、そう叫んだのに!
風音は俺の胸倉を捕んだかと思うと、力任せに、異界への穴から遠く離れた場所に向かって放り投げやかった。
鬼の力で投げつけられた俺は、どことも知れない民家の二階の屋根まで放り投げられ、背中で着地した。
バシッと音が聞こえそうなほど乱暴な取り扱いに、実際に腰が痛む。
一度呻いて、膝を抱えてしまったが、何時までも痛がっている場合じゃねぇ!
痛みに腰をさすった手が人間に戻っていた。
俺は、慌てて屋根から身を乗り出し、身を乗り出せば、異界への入り口近くに風音がいた。
ヤツは、俺の方に向かって微かに頷くと、今まで、その背に乗っていた鵺から降りて叫ぶ。
「僕は、川ほとり神社の最後の神主の息子、雪村 風音だ!
神社の移設を承諾し、結果的に神社を潰したのは、この僕で、他の奴は、関係ない!
文句のある妖は、僕に当たれ」
ウォオオオオオオオォオ
風音の声に、妖共が襲いかかった。
神社が無くなり、中有郷を追われて、よほど腹がたったらしい。
妖共は容赦なく風音に噛みつき、引っ掻いて、赤い液体を噴出させたかと思うと。
まるで、糸が切れた人形のように倒れた風音を、貪り喰らいやがったんだ。
最初のコメントを投稿しよう!