三章

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「あなたが……もし……例え、ここで死んでも。  こんな良い人が、異界で妖に傷つけられたらいけません。  地獄に落ちてもいけません。  あなたに借りたモノのかわり、いただいた想いのかわり。  あなたの業も、僕が引き継いで、この世を去ります」 「風音!」  一人では、逝くな!  俺は、そう叫んだのに!  風音は俺の胸倉を捕んだかと思うと、力任せに、異界への穴から遠く離れた場所に向かって放り投げやかった。  鬼の力で投げつけられた俺は、どことも知れない民家の二階の屋根まで放り投げられ、背中で着地した。  バシッと音が聞こえそうなほど乱暴な取り扱いに、実際に腰が痛む。  一度呻いて、膝を抱えてしまったが、何時までも痛がっている場合じゃねぇ!  痛みに腰をさすった手が人間に戻っていた。  俺は、慌てて屋根から身を乗り出し、身を乗り出せば、異界への入り口近くに風音がいた。  ヤツは、俺の方に向かって微かに頷くと、今まで、その背に乗っていた鵺から降りて叫ぶ。 「僕は、川ほとり神社の最後の神主の息子、雪村 風音だ!  神社の移設を承諾し、結果的に神社を潰したのは、この僕で、他の奴は、関係ない!  文句のある妖は、僕に当たれ」  ウォオオオオオオオォオ  風音の声に、妖共が襲いかかった。  神社が無くなり、中有郷を追われて、よほど腹がたったらしい。  妖共は容赦なく風音に噛みつき、引っ掻いて、赤い液体を噴出させたかと思うと。  まるで、糸が切れた人形のように倒れた風音を、貪り喰らいやがったんだ。  
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