三章

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 ……  …………  気がつけば、真っ暗闇の中にいた。  弱った心臓の動きを監視(モニター)する機械の音、トゥィン、トゥイン、トゥインと規則的に聞こえる音の間に間に、別の音が混じる。  人工呼吸器の、作動音『シュゴー、プシュ』なんて、不気味な音は聞こえなかったが「力也さん!」と叫ぶ声は一つじゃねぇ。  五人以上はいるようだった。  切羽詰まったその声に『うるせえな』と答えようとして、声がかすれる。  どうやら、今まで口の中に突っ込まれていた機械で喉をヤったみたいだ。  最悪な気分で、げほげほと出る咳に身を任せていたら、さっきから俺を呼んでいた声が嬉しそうに叫びやがった。 「若頭の意識が戻ったぞ!」  うぉおおおおお!  うう……くそ! うるっせぇじゃねえか!  周りの声にも頭痛を覚えて悪態をつきつき、目を開けば、そこに見慣れた龍堂組の連中の顔が、いくつも見えた。  これが、俺の現実だった。 「……帰って、来たんだ」  ……別に、どこへ出かけた、と言うわけじゃねぇ、けれど。  胸に熱く込み上げるままに、つぶやいてみれば、それは言葉に、ならなかったらしい。 「何が言いたいんですか?  もう一度、お願いします!」と聞き返す舎弟に別のことを聞いた。 「……なんで、お前たちがここに居る……!?」  ここの病院に通っているのは、絶対秘密にしていたはずなのに。  聞いた俺に、舎弟どもは、次々言った。 「兄貴が、組の事務所から出て行って少し経ってから、雪村、っていう医者から連絡があって!」 「藤堂さんが狙われているから、人数連れて、病院に、来いと!」 「雪村……風音……か」 「そうです! そうです!」  俺のつぶやく言葉に、取り巻きたちがうなづいた。 「……で、今その医者は……?」  聞いた俺に、舎弟の一人が、言いにくそうに口を開いた。 「……亡くなりました」 「……なんだと!?」  思わず出た低いガラガラ声に、舎弟どもが一斉に一歩下がったようだったが、そんなモノは知らん!  続きを促す俺に、舎弟の一人が、恐る恐る、俺に報告して来やがった。
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