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さっき『ひひひひひ』という笑い声と一緒に聞いた、規則正しいハートモニターの機械音と、人工呼吸器の音!
あれが、自分についている機械の音だったんだ。
……と、言うコトはまだ一応、死んだ、とか取り返しのつかない最悪な状態ではない!
よし、なんとかしよう!
と、拳骨を固めて立ち上がり……そのまま、しおしおと座り込む。
……最悪な状態ではないが……まだ、死んでないだけだ。
みろ、この状態を!
自分の肉体から魂、というか意識、というか。
ワケ判らんものがびろーーんと飛び出して、さまよっているなんて!
生霊って言うモノが、幽霊とどう違うのか、判らない。
思わず、とほほほほ、と自分の手を眺めて肩を落とした俺に、雪村先生は、言った。
「今日は、百鬼夜行が行われるため、妖気に魂が惹かれて、肉体から離れてしまったんです。
この夜を、なんとか乗り切れれば、あなたは、回復する見込みがあります」
「ほ……本当か!?
夜を乗り切るって、具体的に、どうすればいいんだ!」
俺はまだ死にくないし、自分自身が化け物だか、妖怪の仲間になるのは、もっと嫌だ!
叫ぶ俺に、雪村先生は指を折々冷静に答えた。
「まず、百鬼夜行に巻き込まれないこと。
次に、自分の魂を妖怪化させないこと。
ま、ここまで、巻き込まれたとしても、最後の一つさえ、なんとかなれば、まあなんとか大丈夫ですが……」
「……なんだよ、その最後の一つ、って!」
「間違っても、百鬼夜行の終点、駅裏の入り口から、魂だけの状態で異界に行かないこと。
異界に行っても、次の百鬼夜行には、現世に戻って来れるかも知れませんが……そうなったら、帰って来た時には、あなたの肉体は死んで、焼かれてるか、腐っているに違いないですからね」
「……!」
いや、魂の抜けた人間の末路は『死』しかないんだろうけれども!
もっと言い方ってモノは無いのか!?
なんて、そんなモノ抗議をしている暇はなかった。
墓石の後ろに居た鬼が、手に持つ杖を振り上げ、踊る。
その途端だった。
鬼の手の杖が『おオおぉオオおオオぉオオオ』と不安定な叫び声をあげ、その口から、闇の空間に向かって長々しい帯がひゅるるるる、と飛び出し、空中に張り付いた。
それが、巨大なファスナーだ、と確認できた瞬間。
鬼が。ファスナーチャックの持ち手になってるらしい、杖を虚空に投げあげ、空間を開く。
……と!
出て来た出て来た、開いた扉から、妖のモノどもが出て来た。
俺が知っているような有名な妖怪も、知らないヤツも。
ごちゃっと集まり、圧倒的な量で集まって、病院に向かって行進して来る。
こ……これが、百鬼夜行か!
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