親友

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親友

僕はC大学法学部4年の榊原幸成(こうせい)22歳。一生幸福で暮らせる ようにという両親の願いが込められている。 父が有能な弁護士なので、小さい頃から当たり前のように 弁護士になる事を決めていた。 小学校2年の時、クラスで物が失くなりガキ大将が疑われた時も 弁護して疑いが晴れ、感謝された事で一層その思いは強くなった。 勉強は常に学年トップだったが、運動は全く出来ず 部活も入ってなかったので友達も少なかったが、 ただ一人親友と呼べるのは、例の小学2年の時弁護した和馬だけで、 勉強ばかりしていた僕はいじめられる事も多かったが、 和馬がいつも助けてくれた。 彼はスポーツ万能で、常にクラスの人気者だった。 そんな和馬の事がずっと羨ましかった。 ぼくらは苦手なところを補い合い、例えば小学校の運動会前には 走り方を和馬に教わりビリだけは免れた事や、中学のテスト前には 僕が山を張り、和馬は最小の努力で良い点を取る事が出来たので お互いに大事な友達だったと思う。 僕の愛読書は小学生から六法全書で外出時は必ずポケット六法を携えていた。 顔は悪くないと思うのだが、分厚い眼鏡にぼさぼさの髪、 服装に至っては父が若い時に着ていた洋服を着ているので、 どこからどうみても昭和の大学生にしか見えず大学でも浮きまくっていた。 そんな訳で、当然彼女いない歴21年。 その代わり、昔から保護者受けは抜群に良かった。 和馬とは小中一緒だったが、高校は別でほとんど会うこともなかった。 卒業前に偶然会った時、大学には行かず、バイトをしながら プロのダンサーを目指すと聞いて以来疎遠になってしまった。 夏休み明けの大学の日、電車で珍しく座れたので僕はすかさず ポケット六法を取り出し真剣に読んでいると、 「相変わらずそんな物読んでるのか、おまえは!」というばかでかい声がしたので驚いて顔を上げると、目の前にめちゃくちゃイケメンになった 和馬が満面の笑みで立っていた。 「和馬!いったい何年ぶりだよ。」 「高3以来だから3年ぶりか~」 「ダンス続けてるのか?」 「おう!まだアマチュアだけど、もうすぐライブハウスで  イベントに出るから観に来いよ。これチケット。 絶対来いよ!じゃあな」 和馬はそう言うと次の駅で、風のように降りて行った。 渡されたチケットに目を落とすと、イベントは一週間後の夕方。 特に予定も無かったし、和馬のダンスを見たかったので チケットは大事にカバンにしまった。
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