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親友の彼女
彼女もすぐに思い出してくれたようで、
「あっ!あの時の……」
とはにかみながらも花束を受け取ってくれた。
席に戻ると、姉が笑い転げて
「どうしちゃったの~!」
「別にいいだろう、誰に渡したって」
僕は和馬の存在をすっかり忘れていたが、
少しすると僕のテーブルに彼女と和馬が来て、
「今日はよく来てくれた!けど、おまえ雰囲気変わったな~
あっ、お姉さんも来てくれたんですね。ありがとうございます」
「和君、立派になって。ダンスサイコーだったよ!」
「あざす!お姉さんも相変わらずおきれいで。
ところでお前、俺の彼女に花束渡してくれちゃっていい度胸してるなあ」
僕は努めて平静を装って
「やっぱり………そんな感じがして彼女に渡したんだ
母さんが和馬にって作ってくれた花束だったんだけど、
男が男に渡すと変な誤解されそうだし、
実は前にハッピーの散歩の時に偶然彼女に会った事があってさ。
それを思い出してつい渡したって訳さ」
と苦しまぎれに言った。
「確か幸成のお母さんフラワーアレンジメントの先生だったな」
「素敵な花束ありがとうございました。
私がもらってしまって良かったんですか?」
「君のダンスすごく良かったから。
受け取ってもらえると母も喜ぶと思うし。」
「ありがとうございます!じゃあ、遠慮なくいただいちゃいますね」
といたずらっぽい彼女の笑顔がまぶしかった。
「良かったな、舞! あー、腹減った。
花束の代わりになんかおごってくれよ!」
「いいよ。和馬のダンス最高だったから何でもおごるよ。
よかったら舞さんもどうぞ。」
「えー、いいんですか~実はお腹ぺこぺこなんです」
こういう遠慮が無い所もかわいくて、ますます彼女に
ひかれている自分がいた。
「姉貴も行く?」
「私は遠慮しとくわよ。後は若い人たちでどうぞ」
と言うと僕をバンとたたき耳元で
「がんばんなさいよ」とささやいて帰って行った。
頑張るも何も、親友の彼女にどうしろっていうんだよ~
心の中で、もう一人の自分がささやいた。
「奪っちゃえよ」
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