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は?異世界だって??
世界を救う?今から??
だめだ理事長の言葉を何一つ理解出来ていない。
周囲も再度ざわめき始める。どうやら理解が追いついていないのは俺だけじゃないようだ。
「はは、ハハハハハ」
そんな中一人の生徒が大声で笑い始めた。
「おいおい。こっちは臨時登校だって言うからわざわざ朝っぱらから来たのに、わけわかんねー事言ってんじゃねーよ!!」
ドカッ!!!
声を荒らげながら一人の生徒が立ち上がり椅子を蹴り飛ばした。
奴の名は桐ヶ谷武(きりがやたけし)。この近辺では有名な不良生徒で、キレやすく手が出るのが早いため警察にも何度かお世話になっているようなやつだ。
そんな奴がキレたのだ、周りがビクつくのも無理はないだろう。
桐ヶ谷は止まらない。
「大体異世界なんてあるわけないだろーが!そんな下らねぇ話するつもりで俺らを集めたのかよ!?」
「ああそうだよ。桐ヶ谷君は信じてないのかい?」
「当たり前だろーが!んなモンアニメや小説の話だぜ?あんたら頭おかしいんじゃねーか?」
今の所桐ヶ谷の意見は俺達A組の生徒を代弁する様なものだ。
誰一人反論することなく黙って聞いている。
「そうか。他のみんなも桐ヶ谷君と同じ意見なのかな?」
理事長はA組全員に問いかけるが誰一人答えることは出来なかった。
「無言は肯定と捉えるよ?」
その問いかけにも誰も反応しない。
「はぁ...そらそうだよな。いきなり異世界とか言われてもピンとこねーか...ならこれならどうだ」
理事長はそう言うと桐ヶ谷に手のひらを向けた。
「あ?なんだよきゅ・・・」
桐ヶ谷が発言を言い切ることは無かった。次の瞬間桐ヶ谷ははるか後方の後ろの黒板に叩きつけられていた。
「ガハッ!!?」
いきなりの事で一瞬思考が止まる。そしてワンテンポ遅れて女子の叫び声が教室にこだました。
ざわめきが大きくなるが俺は飛ばされた桐ヶ谷を見つめる。
ゆっくりと立ち上がり息を整えていた。どうやら背中を強打したことにより肺の空気が一気に吐き出され呼吸をするのがつらそうだ。
そして桐ヶ谷本人も何をされたか全く分かっていなかった。
「今のは桐ヶ谷君に向けて【風の暴弾】という異世界のスキルを使ったのさ。これで信じてくれたかな?」
周囲がまた静かになる。異世界なんて信じられないが現に今目の前で説明出来ない事柄が起きたのだ。
どう説明しても人間がいきなり5m以上離れた壁にどこにも触れずに叩きつけられることなんてないだろう。
説明出来ないことが起こったのだ。信じないわけにはいかなくなってしまった。
そしてもう一つ気になることがあった。
「あの理事長?」
それを確かめるべく質問することにする。
「お、初めて質問してくれるね。君は確かカイリの息子の孝君かな?」
カイリは俺のオヤジの名前だ
「はいそうです。ひとつ聞いていいですか?」
「なんでもいいよ?答えれる範囲でならね。」
答えられる範囲?ということは答えられないもしくは答えたくないこともあるということか
「さっきのスキルですか?確か名前は...」
「【風の暴弾】だね。」
「はいそれです。それって確かスナイデルオンラインにあるスキルと同じ名前ですよね?しかもスキルの効果も同じですよね?」
スナイデルオンライン内での【風の暴弾】の効果は相手に向け不可視の弾丸を打ち込む。追加効果としてノックバックがあったはずだ。
今の桐ヶ谷と同じ状態になるのだ。
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