情事

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情事

「早く会いたかった」 宮内はスーツのチャックを下ろしながら舌なめずりをした。 「今朝、地区の草むしりしてから来たから、汗もかいてるし、Gパンで作業したから蒸れてるかも。匂う?」 膝をついて股間に顔を寄せると、彼の言う通り、汗と柔軟剤が混ざったような匂いがした、 「でも、好きだろ?俺の匂い」 頷きながらボクサーパンツを下ろす。 「綺麗にしてくれるだろ」 麻里子はそれを見ながら、胃の痛みと軽い吐き気をこらえる。 「嘗めて。麻里子」 営業課の事務所内ではけして出さない甘えた声で囁く。 任侠映画の二枚目俳優によく似ていると評判の彫りの深い顔が、目尻も眉も頬骨も口角も、パーツというパーツを左右に垂らしながら微笑む。 このだらしのない表情だけ見れば、五年連続成績ナンバーワンであり、昨年メーカー賞を受賞したディーラー営業マンだとは誰も思うまい。 努めて感性を凍らせて、鼻の息を止めながらそれを咥える。ザラザラとした裏側を舐め取るように舌を滑らすと、 宮内は「は…」と陶酔するような声を出した。 眉間を引くつかせながら、一気に奥まで咥え込む。 自分を誤魔化すように二回、三回と挿入と抜去を繰り返すと、ホルモンみたいな食感が、少しずつ某コンビニのレギュラーフランクに近づいていく。 「もう、いいぞ」 そう言うと、宮内は汗ばんだ手で麻里子の頬を包んだ。 そうか。今日はそっちまでやるんだ。途端に胸が憂鬱になる。  「立ってパンツを下げろ」 言われたとおりにパンツを足首まで下げて、後ろを向くと壁に手をついた。 生暖かい少し湿った手が、スカートに侵入し、一気に腰までたくし上げられる。 「この上を向いた尻がたまんないよな」 言いながら麻里子の臀部を撫で回す。 そして尻の割れ目から一気に手を滑り込ませてくる。 「まだ濡れてないな」 ギクリとすることを言うと、その手を口に持っていき、唾液を含ませ、戻す。冷たい感触が股に広がり、身体中に悪寒が走る。 「お前って気持ちいいと、鳥肌が立つよな」 はっきり言って、気持ちがよくて鳥肌が立ったことはない。 太ももをこするように撫でられる。 「そういうとこ、ガキみたいでかわいい」 撫でていた右手が、股間に戻ってくる。 割れ目をなぞり、突起を弄ぶ。まだ十分に濡れていないそこは、軽く痛みを感じる。 「一見濡れてなさそうで―――」 言いながら中指が割れ目の中から穴を見つけ出し、 一気に根元まで挿入される。 「ほら。奥はちゃんと濡れてる」 良かった。“ちゃんと濡れて”いた。安堵しながら、少しだけ振り向いて、恥ずかしそうに頷いて見せる。 「本当にかわいいやつだよ、お前は」 指がゆっくり出し入れされる。下半身に淡く鋭い物理的な快感が広がってくる。 ああ、大丈夫だ。これで本格的に麻里子の膣は潤ってくる。 もう痛さに耐えることはない。 その蜜を十分に潤わせてから、先程まで麻里子が綺麗にしたものがあてがわれる。 「挿れるぞ」 耳元でつぶやかれて、また軽く鳥肌が立つ。だが、今度はお構いなしにレギュラーフランクが入ってくる。壁に付いている自分の手の甲を見つめる。 ーーーなぜか前よりも指が太くなった気がする。 「いいよ。麻里子。お前の中はすごく温かくて、守られてるような、は、気がするんだ」 最近ピアノを弾くのをサボっているからだろうか。そもそも指も太ったりするのだろうか。 「あっ!んんっ…」 ーーー大学時代に付き合っていた彼氏からもらった指輪は確か7号だった。 「今度の飲み会の後、たっぷり可愛がってやるからな。またホテルに行こうな」 ーーー7号。7号か。 「もういいか、イッても?」 ーーー二匹の蛇が絡み合っているようなおしゃれなシルバーのリング。今は入るだろうか。 あ、やばい。喘ぎ声を忘れていた。今頃喘ぎ始める。 「―――ん!ふっ…!んん!」 声優になれるかも知れない。 顔が見えていないことをいいことに、今まで頑張って声を我慢してましたというようなくぐもった声を出しながら、無表情な顔で、声帯だけの演技を続ける。 「…………っ!こっち向いて」 げ。今日は舌か。 落胆をさとられないまま振り向くと、跪き舌を出す。そこに自分のものを軽くしごいた宮内から、白い液体が放出される。 精液を飲むのは、宮内が初めてではない。 男はこちらがさほど嫌がらなければ、女には飲ませたい生き物だと理解している。 かくいう麻里子も吐き気がするほど苦手、というわけではない。 しかし、もちろんもろ手をあげて歓迎しているわけでもない。 宮内は満足したように麻里子の顔を見る。 そしてもういいよというように小さく頷くと、自分の一物を拭きもせずにパンツの中に収めた。
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