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宮内課長
「宮内課長」
松田が空っぽになった手を下ろしながら宮内を見た。
「課長がいないと二次会盛り上がらないでしょう。大丈夫ですよ。俺がタクシーで送っていきますから」
宮内は一瞬こちらを振り返ったが、すぐ松田に眼を戻した。
「大丈夫だ。ここからこいつの家までは十五分かからない。送って戻って参加するさ」
「そんなことしなくても、俺が送っていきますよ。今日はちょっと飲みすぎたんで、もう帰りますから。ついでです」
松田も食い下がる。
「松田。俺にはこいつを送り届ける責任があるんだよ。上司として。年頃のお嬢さんの命と安全を預かっている身なんでな」
そう言うと、松田はまだ何か言いたそうな顔をしていたが、ふうと息をつくと、後ろにいた麻里子を見た。
「お前、部下思いのいい上司持って幸せだな」
と言いながら一歩退いた。
「じゃあ、課長、その酔っぱらいのこと、よろしくお願いシマス」
黒い集団は、いつの間にか二次会に行ってしまったようだ。
二人残された宮内と麻里子は向かい合った。
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