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そして、彼は今。
あのビルの屋上に立っている。
隣には、あの悪魔。
「どうして、また死のうとするんですか?」
「決まっているだろう。僕は沢山の人を殺した」
「まだ分かりませんよ。あのミサイルは偶然かもしれない。世界中の人が、小さな不幸を体験しただけかもしれない。違いますか?」
男は黙りこむ。
「万が一の勘違いで、手にした金を棒に振りますか?」
「違うんだよ。論点はそこじゃない。誰がどんな不幸を負ったかじゃなくて、僕がこのボタンを押したかどうかなんだよ」
「···」
「じゃあ、また、あっちでね。」
男は息を止める。前方にジャンプ。いつの日かと同じ感覚に陥る。同時に落下を開始。
悪魔が欠伸を噛み殺した時には、男は肉の塊と化していた。
「さて、次はどこへ行こうかな」
優雅な羽を揺らし、悪魔は、ボタン片手に飛び立っていった。
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