二千二十九年 六月十四日 午前零時十三分 九州地方 長崎県

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そして、彼は今。 あのビルの屋上に立っている。 隣には、あの悪魔。 「どうして、また死のうとするんですか?」 「決まっているだろう。僕は沢山の人を殺した」 「まだ分かりませんよ。あのミサイルは偶然かもしれない。世界中の人が、小さな不幸を体験しただけかもしれない。違いますか?」 男は黙りこむ。 「万が一の勘違いで、手にした金を棒に振りますか?」 「違うんだよ。論点はそこじゃない。誰がどんな不幸を負ったかじゃなくて、僕がこのボタンを押したかどうかなんだよ」 「···」 「じゃあ、また、あっちでね。」 男は息を止める。前方にジャンプ。いつの日かと同じ感覚に陥る。同時に落下を開始。 悪魔が欠伸を噛み殺した時には、男は肉の塊と化していた。 「さて、次はどこへ行こうかな」 優雅な羽を揺らし、悪魔は、ボタン片手に飛び立っていった。
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