二千二十九年 六月七日 午後十一時四十三分 九州地方 長崎県

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横たわって三十秒が経った。 ···意識がある。 目を開けるとそこは、先程飛び降りたはずの屋上だった。 目の前では怪しげな好青年が、いたずらっぽい笑みをこちらへ向けている。 「大丈夫ですかぁー?」 ···なぜ僕はまだ生きているのだろう。 「それはですね、なんと、私が悪魔だからなんですよ」 会話が頭に入ってこない。 そもそも彼も僕も、口を開いていない。 「これは俗に言う、脳内直接コミュニケーションです」 なんだそりゃ。 そんなのが信じられる訳がない。 それとも、ここは既に死後の世界なのだろうか。 「いいえ。残念ながらここは、貴方が忌み嫌う現実です。貴方が先程飛び降りをし、そして僕が助けました」 ···ふざけるな。僕は立ち上がった。
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