二千二十九年 六月七日 午後十一時四十三分 九州地方 長崎県

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「このボタンは一回押すごとに、百万円が押した人の通帳に金が振り込まれるボタンです。何回でも押すことができます。例えば、なんとこのボタンを八回押すだけで、貴方の借金がキレイさっぱりなくなります」 なるほど。確かに、僕の借金は七百八十万前後だったような気がする。 「はい。正確には、七百八十三万四千十二円です。そこで、このボタンです。これを貴方に差し上げますので、大事にお使いください」 ···何故僕に優しくするんだ? 「それはここ数ヶ月見ていて、貴方が可哀想だったからですよ。それはもう悪魔も引く程」 このボタンは本物なのか? 「はい。そこは、悪魔歴二百八十年の大ベテランが保証します。それではまた、一週間後お伺いしますね」 そう言うと悪魔は、夜の闇に溶け込んでいった。
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