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次会えるとしたら
次会えるとしたら夏休みだろうか?
でも、大学生は忙しいと聞くし確証はない。
旅費だって馬鹿にならないんだから、最悪 冬になるかもしれない。
今はスマホがある。 話そうと思えばメールがあるし、電話だって出来る。
でも、幼い頃からすぐ近所に居て見れた顔は、簡単には見られなくなる。
こんな寂しいことは無い。
しかし、これは優雁姉が大人になる喜ばしいこと。
笑顔で送り出すって決めたのに、泣いてしまうなんて情けない。
でも、しかし、と自問自答を繰り返す。
一度流した涙は止まらないず、自分の袖でゴシゴシと強く擦った。
すると陽だまりのような暖かい温もりが、抱き締めてくれたんだ。
優雁姉だ。
長くて黒いサラサラの髪が頬を撫でて くすぐったい。
行っちゃ嫌だ!なんて、当然言えない。
代わりに「う〜〜」と、本格的に泣き出した。
と、ここで水を差す花 。
………いや、これは枝?
頭に押し付けられて、地味に刺さる。
抱き締められた隙間から、腕を振り上げ顔を上げる。
「ちょっ、痛いんだけど!」
怒声は駅のホーム内に響いて、犯人・ 新葉 裕太 の元へしっかり届いた。
裕太は近所の花屋の息子で、同い年の幼馴染。
昔はスカートを履かせても違和感が無く、非常に可愛いかった。
しかし今、その片鱗は跡形もなく、ただの野球大好き脳筋馬鹿。
昔から意地悪で、今も変わらず真顔で意地悪を仕掛けてくる。
裕太からの返事は「ああ、居たの」。
更にこうも続けた。
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