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月日は過ぎ去り
◇
月日は過ぎ去り、真夏。
蝉が短い命を燃やし、懸命に声を張り上げる。
夏といえばひまわり。太陽に向かって、凛と立つ姿は堂々としていて、裕太に似ている。
…なんて、どうでもいいか。
夏休みに入った。
優雁姉が久し振りに帰って来てくれたので、顔を合わせる。
冷たい麦茶を傍らに、買ってきたポテトチップスを広げた。
今日は女子会。ムカつく裕太は居ない。
あの時、裕太から貰った山法師が咲いた。
そんな話題になって、スマホの写真を見せて貰う。
裕太が言ったように、白い花。
小さくて可愛いらしくて、以前よりか一回り 大きくなった気がした。
写真を眺めて あーだこーだと話をして居ると、ふと、私は思い出した。
「そう言えば、桃の花って何だったんだろう?」
考える前に口から出ていた。気づくとすぐに、慌てて口をおさえた。
口に出したと同時に、優雁姉があの時 悲しそうな顔をしていたことを思い出したからだ。
しかし優雁姉は私の心配を他所に、呆気らかんとした様子で「ああ、アレね」と笑った。
それからこうも続ける。
「実はね?私、茜ちゃんに秘密にしていることがあるの」
秘密?優雁姉が私に秘密?
優雁姉とは大の仲良し。何でも話すし、話して貰える仲なんだと思っていた。
そんな私に秘密……。
全く見当も付かなくて小首を傾げたら、優雁姉が衝撃的発言を投下した。
「私ね。ここを出て行く前夜に、裕太くんに告白したの」
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