ボクとQちゃんとミントタブレット

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 話は最初に戻る。  これまで述べてきた経緯──つまり、放課後に校庭でドッジボールをしたため服が砂で少し汚れていたため、それを母に指摘されたのである。ドッジボールをやっていたことや、やることになった経緯をお母さんに話すと、 「あんたもたまには友達と遊ぶんだね。お母さん嬉しいな。だって、あんた、いつも一人で遊ぶんだもの。これをきっかけにどんどん、友達と遊びなさいね。一人遊びも楽しいかもしれないけど、みんなで遊ぶのも楽しいでしょう?」 と声をかけられた。  ボクは一人遊びが好きでよくしていたが、それを母はよくないと思って次の言葉をボクに言い聞かせていた。 ”人は一人では生きていけない。だから、人と仲良くしないといけない”  言葉の意味は分からなかったが、友達と遊ぶのも悪くないなと思った。   母から汚れた服を着替えるように言われたので、首元に手を持っていき、「よっこいしょ」と言いながら、頭を亀のように引っ込める。両腕も殻にしまい、殻を脱衣所の床に投げるようにしておく。上の殻を脱ぐと下の殻も同様に続けた。新しい服を着た後、リビングの椅子に座り携帯ゲーム機で遊んでいると父が帰ってきた。父が浴室で作業着からジャージ姿に着替えるとボクの隣に腰をかけた。  一方、母はテーブルの上に料理を運び始めていたが、父や母に見向きもせず、ボクはゲームの世界に夢中になっていた。普段ならちらっと横目で本日のご飯が何であるかを見るのだが、その日は見向きもせず母のご飯の用意が済むまでずっとゲームにのめり込んでいた。  テーブルに食事が揃い、家族3人でご飯を食べた。食事が終わると、あんなにゲームにのめり込んでいたわけが分かった。父がタバコを吸っていなかったからである。  父は食事の前と後で必ずタバコを吸う。だが、その日は食事の前後に吸っていなかった。タバコの煙の臭いが部屋にしなかったからゲームに集中できていたのであった。
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