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大ちゃんに化学の問題を教えてもらっている間に、教室は少しずつ騒がしくなってきた。
おはよう、おはようと挨拶が飛び交う中、突然後ろからポンと肩を叩かれた。
同時に、聴き慣れた明るい声が耳に入る。
「おはよっ。何してるの?」
クラスメイトの真由美だ。
後ろでひとつにまとめたミディアムヘア。
短い前髪とキリッとした眉が、快活そうな印象を与えている。
「おはよ。大ちゃんに助けてもらってるの」
「へえ、何を?」
机に広げられた教科書とノートを見るなり、真由美は羨ましいほどの大きな眼をスッと細めた。
「あー、molの宿題ね。私にもちょっと見せて」
「真由美はいいだろ、俺より賢いんだから」と大ちゃん。
「ま、そうだけど」
「なんだそれ。ちょっとは謙遜しろよ」
「それより大貴、今日はやけに早いじゃん?」
ニヤニヤ顔の真由美に、大ちゃんは険のある声を投げつけた。
「いいから。邪魔するなよ」
「はいはい」
含み笑いをしたまま、真由美は「じゃ、頑張ってね」と私に声をかけ、軽快に身を翻した。
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