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顔を背けようとした刹那、ばっちりと目が合った。 表情を変えず、スマホを持っていない方の手を軽く上げる。 私はぎこちない笑みを浮かべると、そろそろと歩みを進め、口を開いた。 「おはよう」 「おはよ」 「今日も暑いね」 「…うん」 ボソッと応え、大ちゃんは隣に並んで立った私に尋ねた。 「ニワトリの宿題、やってきた?」 「えっ。宿題なんてあった?」 “ニワトリ”とは、私たち高校1年生の学年主任でもある、化学の男性教師のこと。 いつも髪の毛がトサカみたいにはねているから、“ニワトリ”。生徒に陰でそう呼ばれている。 私の反応を見て、大ちゃんは少しだけ口の端を上げた。
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