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大ちゃんが私を見るその瞳には、時々ふっと暗い影が過ぎる。
切れ長の眼に浮かぶ、苦渋の色。
その眼を向けられると、私はつい、顔を背けてしまう。
──ごめん。
大ちゃんの悲しそうな胸の内が、聞こえてくるような気がするから。
そんな眼で私を見ないでほしい。
苦しげな表情を浮かべないでほしい。
大ちゃんと一緒に居られる幸せな気持ちが、風船から空気が抜けていくかのように、私の心から瞬く間に消え失せてしまうから。
私は、大ちゃんが笑っている姿を見ていたい。
近くで大ちゃんの存在を感じていたい。
ただそれだけなのに。
それだけで幸せなのに、ふとした時に見せる大ちゃんの暗い瞳が、私のそんな気持ちを拒んでいるように思えてならない。
そして不安になるのだ。
私と一緒にいる限り、大ちゃんが心から笑うことは、もうないのではないか。
私は大ちゃんのそばにいてはいけないのではないだろうかと。
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