─2─

1/7
前へ
/194ページ
次へ

─2─

学校に着く頃には、太陽は雲の間からはっきりとその姿を現していた。 「暑いな」 「うん…溶けそう…」 肌を焦がすような強い日差しから逃げるように、私たちは早足に校内に入った。 3階にある教室は、既にクーラーが効いて涼しくなっていた。 早い時間。 数人のいつもの顔ぶれに挨拶をすると、私は自分の席にバッグを置いて、中から化学の教科書とノートを取り出した。 大ちゃんは教室の隅に置いてある折り畳み椅子を運び、自分の机の横に広げた。 お礼を言って、しずしずとそこに腰を下ろす。 ちょっと腕を動かせば触れられるほどの、近い距離。 たちまち胸を高鳴らせた私の手から、大ちゃんはするりと教科書を抜き取った。 そして、机の上に開いて乗せる。 私は大仰にため息を吐いた。
/194ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加