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「あーあ。面倒くさいなあ」 「……教えてもらう側の態度じゃないな、それは」 「だって、化学嫌いなんだもん。ニワトリのことも苦手だし」 「嫌いでも勉強はやらなきゃいけないだろ」 「……分かってるよ」 口を尖らせ、私は教科書の横に頬杖をついた。 「大ちゃんが化学の先生だったらいいのになあ。優しいし、教え方うまいし」 大ちゃんはちょっぴり嬉しそうに微笑を浮かべ、「いいよ」と応じた。 「ただし、不真面目な生徒には毎日大量の宿題を課す」 「わっ、それはヤダ!」 慌てて居住まいを正すと、大ちゃんは声を出して笑った。 明るい笑顔に、トクンと心臓が震える。 先生じゃなくて、恋人になってくれたらいいのにな。 そう思ってすぐに、私は急いで自身を戒めた。 何を考えているんだろう。 そんなこと望んじゃいけないのに。 ダメダメ、今こうして一緒にいられるだけで、幸せなんだから── 表情を引き締めると、私は「大ちゃん先生!」と声を張った。 「どうぞ教えてください。よろしくお願いします!」
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