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空を覆った雲の切れ間から、薄っすらと光が差している。 今日の天気予報は晴れ。 やがて薄灰色の雲を押し除けるようにして、太陽が顔を出してくるだろう。 明るい日差しを浴びたら、私の心もカラッと晴れてくれるだろうか。 胸にかかるもやもやを払いのけ、心に光を降り注いでくれるだろうか。 暗たんとした面持ちで駅に向かって歩いて行くと、後ろから中年のサラリーマンが小走りに私を追い越していった。 もうすぐ電車が到着する時間だ。 彼に倣って駆けようとしたが、すぐに気が萎えた。 次の電車でも学校には十分間に合う。 遠ざかっていくサラリーマン。 その汗の滲んだ背中を見送った時だった。 改札口へせかせかと足を向ける大勢の人の中に、よく見知った顔を発見した。
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