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「はい、お待たせ。本日のお献立よ」
「あ、ありがとう」
カウンター越しに料理を載せたお盆を受け取る際、彼女の指に指が触れてしまった。
『うわ…、女将さんの指が…』
ボクはオロオロするが、何ともなかったようにお盆をカウンターに置き、並べている料理を覗いた。
「女将さん、これは…?」
「はい、これはね…」
ボクは一つ一つの料理を質問すると、彼女も嬉しそうに丁寧に説明してくれた。
「ご馳走様でした。女将さん、美味しかったんです」
「お粗末さまでごめんなさいね」
「いいえ、とんでもありません」
いつもは早食いで平らげる自分だったが、今回は一口ずつゆっくり味を噛みしめたため、1時間近くもかかった。
最後の一滴までお茶を飲み干すと、ボクはカウンターから立ち上がろうとしたが…
「ねえ、お客様のお名前は…?」
「え…!?」
「あたしね…お客様のこと、結構気にいったから。まだお越しに来てくれないかな?」
「は、はい!毎日は無理ですけど…」
「日曜た月曜は定休日だから。火曜から土曜なら毎日に来てくれたら、嬉しいな」
「ボクの少ない給料がなくなっちゃいますよ」
今になって、ボクは他の客がいなくなっているのに気付いた。
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