添え物と日々

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「死の前兆、っていうの」  (さくら)が、わずかにフォークを動かす。その先にあるのは付け合わせのパセリだ。 「何が」  拓哉(たくや)は櫻と同じメニューのハンバーグを、ナイフで切る動きを止めた。顔を上げ、彼女に目を合わせる。 「パセリの、花言葉」  櫻の薄い唇が、呪文でも唱えるように教えた。  拓哉はそのとき、言葉にしがたい奇妙な感覚を得て、すぐには返事が出なかったのだ。 「……へえ、そうなのか」  自分のハンバーグランチの、緑色の付け合わせをまじまじと見つめる。フリルのような葉をして、独特の苦味を持つこの野菜を、彼はどちらかといえば食べないほうだ。 「基本添え物の割にはおっかないな。ていうか、パセリにも花あるんだな」  とりあえず笑みを混ぜて返す。  次の櫻の言葉が、ふたりに沈黙を落とした。 「すみれが教えてくれたの」  拓哉は硬直して、気遣うように細く息を呑んだ。店内のクーラーの響きが、重く耳に入ってくる。  もういない人の話題は、どうあっても重さというものを避けられない。自分たちにまだ、元の日々が戻ってこないことを実感させられる。  喫茶店内には、静かなジャズが流れている。それがこの高校生カップルの沈黙の意味を無視して、ムードを出そうとしていた。ランチの時間帯だというのに、拓哉と櫻以外に客はいなかった。  数秒経って、櫻がまた口を開いた。
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